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「駅徒歩10分」の壁 中古マンション価格、内と外では㎡単価の差が27.1%

物件広告で最初に目に入るのが駅からの徒歩分数だろう。徒歩7分と10分、歩けば3分の差でしかない。その3分に、査定の世界では大きな差がある。徒歩10分以内とそれ以上では、価格はどのくらい変わるのか。

Gold beans.編集部2026/09/22

「駅徒歩10分」の壁 中古マンション価格、内と外では㎡単価の差が27.1%
  • 東京23区の中古マンションの㎡単価は、徒歩10分と15分を比べると27.1%の差がある
  • 査定マニュアルが標準(±0点)に置いているのは徒歩10分で、そこを超えると1分ごとに減点が入る
  • 首都圏の在庫は6か月連続で増え、成約価格との差は1810万円。徒歩分数のような減点要素は市場が緩むほど効く

この記事でわかること

徒歩7分と10分の差は、320メートル
10分を境に、単価の下がり方が変わる
査定が「標準」を置いているのは「10分」
いま、減点が効きやすい市場になっている
分数が同じでも、道は同じではない

徒歩7分と10分の差は、320メートル

まず前提を確認しておく。不動産広告の徒歩分数は、不動産の表示に関する公正競争規約施行規則の第10条で道路距離80メートルにつき1分間と定められており、1分未満の端数は1分として算出される。

つまり徒歩7分は道路距離480メートル超560メートル以下、徒歩10分は720メートル超800メートル以下を指す。7分と10分の差は最大で320メートル、歩けば3分だ。

この数字に信号待ちや坂道は入っていない。起点も2022年9月の改正で明確になり、マンションなら建物の出入口から測ることになった。平坦な直線と急坂の320メートルが、広告の上では同じ3分として並ぶ。ここが後で効いてくる。

10分を境に、単価の下がり方が変わる

では実際の成約価格は、徒歩分数でどれだけ変わるのか。

国土交通省の不動産情報ライブラリのデータをもとにした分析では、東京23区の中古マンションの㎡単価は徒歩1分で124.31万円、徒歩5分で113.44万円、徒歩10分で100.07万円、徒歩15分で72.96万円となっている。徒歩1分を100とすると、10分で19.5%、15分では41.3%下がる計算だ。

注目したいのは、その下がり方である。1分から10分までの9分間で19.5%、10分から15分までのわずか5分間で21.8ポイント分が落ちている。同じ1分でも、10分を超えてからの1分のほうが大きい。10分と15分だけを比べれば、その差は27.1%になる。

これは古いデータも同じだ。東京カンテイが2009年1月から2010年9月の中古売却事例を調べたところ、首都圏では徒歩1分あたり平均坪単価が4.0万円ずつ下がるなかで、徒歩9分と10分の間だけ12.7万円の段差が生じていた。15年以上前の分析だが“1分の重さ”の違いは変わりない。

駅からの徒歩分数㎡単価徒歩1分との差70㎡に換算した価格
1分124.31万円/㎡8702万円
5分113.44万円/㎡▲8.7%7941万円
10分100.07万円/㎡▲19.5%7005万円
15分72.96万円/㎡▲41.3%5107万円
東京23区の中古マンション(2022年1〜3月期〜2024年10〜12月期)。70㎡換算価格は㎡単価×70で筆者が算出。徒歩10分と15分の差は27.1%。下落幅はエリアによって差がある。出典=国土交通省「不動産情報ライブラリ」をもとにした分析

査定が「標準」を置いているのは「10分」

段差の正体は、査定の仕組みの側にもある。

不動産会社が売り出し価格を決めるとき、公益財団法人不動産流通推進センターの「価格査定マニュアル」を使うことが多い。このマニュアルは、国土交通省の告示に基づいて作られ、実務の標準になっているものだ。

このマニュアルは交通の便を評点で扱い、徒歩10分を標準(±0点)に置いている。9分までがプラス、11分からマイナスへ入り、遠ざかるほど減点が積み上がる仕組み。徒歩20分を超えると14点前後の減点になる。

ここで押さえておきたいのは、この評点表が土地(戸建住宅)の評価項目だという点である。中古マンションの査定で例示されているのは室内の維持管理状況、耐震性、所在階の3つで、徒歩分数の評点表は公表資料に出てこない。マンションの値づけは分数そのものより、事例マンションとの比較のなかで決まるようだ。

それでも徒歩10分という線は残る。買い手が検索条件で「駅徒歩10分以内」を選び、査定の世界も10分を標準に置いている。買う側と値をつける側が、同じ場所に線を引いているのだから、そこに段差ができないほうがおかしいといえるだろう。

いま、減点が効きやすい市場になっている

問題は、その減点がどれだけ価格に出るかだ。市場の局面によって変わる。

東日本不動産流通機構によると、2026年8月の首都圏中古マンションの成約件数は3180件で前年同月比マイナス10.5%と5か月連続の減少、成約㎡単価は81.60万円で同マイナス3.8%と4か月連続の下落となり、1990年10月の83.50万円を下回った。

一方で在庫件数は4万8235件と6か月連続で増え、在庫価格は6939万円で前年同月比プラス29.0%まで上がっている。成約価格は5129万円だから、売れ残っている物件と実際に売れた物件の差は1810万円ある。

 2026年8月前年同月比連続した月数
成約件数3180件▲10.5%5か月連続の減少
成約㎡単価81.60万円/㎡▲3.8%4か月連続の下落
成約価格5129万円▲2.8%4か月連続の下落
在庫件数4万8235件+8.2%6か月連続の増加
在庫㎡単価119.36万円/㎡+28.4%25か月連続の上昇
在庫価格6939万円+29.0%25か月連続の上昇
首都圏の中古マンション。成約は実際に売れた物件、在庫は売れ残っている物件を指す。成約価格5129万円と在庫価格6939万円の差は1810万円。成約㎡単価81.60万円/㎡は1990年10月の83.50万円/㎡を下回る。出典=東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート」2026年8月度

売り出しても売れずに残った物件が、成約している物件より35%高い値をつけている状態だ。こうなると条件の劣る物件から順に売れ残る。徒歩分数のような減点要素は、市場が緩んでいるときほど価格に効くといえるだろう。売り手が強気でいられた時期には徒歩12分でも売れただろうが、在庫が6か月積み上がる局面では同じ値段では動かない。

分数が同じでも、道は同じではない

買う側から見れば、10分の減点は割安に買える理由になる。査定が機械的に線を引く以上、そこには実態以上に下げられている物件が混ざるからだ。

とはいえ、やはり見るべきは分数ではなく経路だろう。徒歩10分でも平坦な一本道で途中に商店街があるなら、徒歩7分の急坂に生活の快適さで劣らない。分数が同じでも中身は違うのに、見分けラインでは分数しか見ていない。その乖離が買い手の取り分になる。

一方、売る側にとっては逆になる。分数は変えられないが、管理状態や修繕積立金の積み方、リフォーム履歴は積み上げられる。マンションの査定で例示されているのがまさにその種の項目である以上、そこで取り返す余地は残っている。

歩いて3分の差が数百万円になるというのは理不尽に思えるが、値段が示すのは分数ではない。たとえ3分の差であっても、これから何十年、毎日往復するという事実に値段がついている。測るべきは分数ではなく、どんな天候でも苦なく歩き続けられるか、どこまで許容できるか。その費用対効果ではないだろうか。

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