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この記事でわかること
2割特例が使えるのは個人なら2026年分まで
マイクロ法人は翌期から本来の計算に戻る
個人事業主は2027・2028年分に3割特例
売上800万円のデザイナーで納税額を試算
業種別のみなし仕入れ率と届け出の期限
2029年に向けた帳簿と価格の見直し
2割特例は2026年分で終わる
2023年10月のインボイス制度の開始に合わせて、免税事業者から課税事業者になった小規模な事業者のために設けられたのが2割特例だ。売上にかかる消費税額の2割を納めればよく、経費の計算も、簡易課税の届け出もいらない。
この特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象だった。個人事業主の課税期間は暦年なので、2026年分が最後になる。2027年3月31日が期限の申告までは、これまでどおり2割で計算できる。
法人は決算期によって違い、3月決算の法人なら2027年3月期が最後の課税期間になる。
法人にはつなぎの措置がない
法人の場合、2割特例が終わった翌期からいきなり本来の計算に戻る。3月決算の小さな法人なら、2027年4月からの事業年度は本則課税か簡易課税だ。
フリーランスが節税のために法人を作った、いわゆるマイクロ法人は、売上の大半が役務の提供というケースが多い。その場合は簡易課税でもサービス業の50%しか差し引けず、納税額は2割特例のころの2.5倍になる。個人で続けていれば3割特例で2年間の猶予があったのに、法人にしたことでその猶予を受けられない形になる。法人化を考えている個人事業主は、消費税の計算が変わる時期も勘定に入れておきたい。
2027年分からは「3割特例」へ
令和8年度税制改正で、個人事業主にはつなぎの措置ができた。免税事業者からインボイス登録をして課税事業者になった小規模な個人事業者は、2027年分と2028年分について、売上にかかる消費税額の3割を納めればよい。3割特例と呼ばれる。対象になるのは、2割特例と同じく、基準期間の課税売上高が1000万円以下で、インボイス登録をしなければ免税事業者のままでいられた年に限られる。
法人にはこの措置がない。2割特例が終わった法人は、本則課税か簡易課税のどちらかで計算することになる。
売上800万円なら消費税は8万円増える
では、どれだけ増えるのか。売上が税抜き800万円のフリーランスのデザイナーで試算してみた。
売上にかかる消費税額は80万円。2割特例なら納税額は16万円で済んだ。3割特例では24万円になり、8万円増える。
デザイナーのようなサービス業なら、簡易課税のみなし仕入れ率は50%なので、納税額は40万円になる。3割特例のほうが16万円少なく、2028年分までは3割特例を選ぶのが有利だ。
2029年分からは3割特例もなくなり、本則課税か簡易課税で計算する。サービス業で経費の少ない事業者なら、2割特例のころに比べて納税額は2.5倍になる。
本則課税は、売上の消費税から、実際に払った仕入れや経費の消費税を差し引く計算だ。同じデザイナーが、パソコンやソフトウエア、外注費などで税抜き200万円の経費を使っていれば、差し引ける消費税は20万円で、納税額は60万円になる。簡易課税の40万円のほうが少ない。本則課税が有利になるのは、経費が売上の半分を超えるような事業者だ。
| 計算の方法 | 売上800万円・経費200万円のデザイナーの納税額 |
|---|---|
| 2割特例(2026年分まで) | 16万円 |
| 3割特例(2027・2028年分) | 24万円 |
| 簡易課税(サービス業・第5種) | 40万円 |
| 本則課税 | 60万円 |
卸売・小売は簡易課税のほうが得
意外なのは、業種によっては3割特例より簡易課税のほうが納税額が少なくなる点だ。
3割特例は、売上の消費税額から7割を差し引くのと同じ計算になる。簡易課税のみなし仕入れ率は業種ごとに決まっており、卸売業は90%、小売業は80%、製造業や建設業は70%、飲食店業は60%、サービス業は50%、不動産業は40%だ。
| 業種 | みなし仕入れ率 | 3割特例との比較 |
|---|---|---|
| 卸売業(第1種) | 90% | 簡易課税が得 |
| 小売業(第2種) | 80% | 簡易課税が得 |
| 製造業・建設業など(第3種) | 70% | 同じ |
| 飲食店業など(第4種) | 60% | 3割特例が得 |
| サービス業など(第5種) | 50% | 3割特例が得 |
| 不動産業(第6種) | 40% | 3割特例が得 |
売上800万円の小売業なら、簡易課税の納税額は16万円で、2割特例と変わらない。3割特例の24万円より8万円少ない。
2割特例は申告のたびに選べたが、簡易課税は原則として、使いたい年の前の年のうちに届け出が必要だ。2割特例を使った事業者には例外があり、2割特例を使った年の翌年中に届け出れば、その年から簡易課税を選べる。2026年分まで2割特例を使った小売業の事業者なら、2027年中に届け出れば2027年分から簡易課税で申告できる。とはいえ一度簡易課税を選ぶと、原則2年間は本則課税に戻れない。経費が多く本則課税のほうが得になりそうな年が見込まれるなら、慎重に判断したい。
2029年に向けて準備すること
3割特例は2年間のつなぎで、2029年分からは本則課税か簡易課税しか残らない。本則課税を選ぶなら、仕入れや経費のインボイスを保存しておく必要がある。2割特例のあいだは使わなかった帳簿の付け方を、いまのうちに整えておくと慌てずに済む。
もう1つは、価格の見直しだ。2割特例のもとで納めてきた消費税は、本来の計算より小さかった。2029年に向けて納税額は段階的に増えていく。取引先との単価の交渉は、負担が増えてから切り出すより、増えるとわかっているいまのほうが話しやすい。
逆に、インボイス登録をしていない免税事業者から仕入れる側の負担も、2026年10月から重くなった。免税事業者への支払いに含まれる消費税のうち、差し引ける割合が8割から7割に下がり、2028年10月からは5割になる。発注する側が取引先の登録の有無を見直す動きは、これから強まるとみられる。免税事業者のまま続けるか、登録して2割特例と3割特例を使うかの判断も、取引先の顔ぶれと合わせて考えたい。
インボイス制度の経過措置は、2割特例から3割特例へ、仕入れ側の8割控除から7割控除へと、少しずつ本来の形に近づいている。猶予の時間をどう使うかで、2029年の申告の重さは変わる。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を示すものではありません。適用の可否は税務署または税理士にご確認ください。
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