北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。
この記事でわかること
・肥満とメタボリックシンドロームの違い、放置するリスク
・【食積タイプ】お腹ぽっこり・脂肪太りに効く漢方(防風通聖散/大承気湯)
・【水毒タイプ】色白でぽっちゃり・水太りに効く漢方(防已黄耆湯/五苓散)
・【気滞タイプ】イライラを伴う固太りに効く漢方(大柴胡湯/柴胡加竜骨牡蛎湯)
・【瘀血タイプ】血行不良による下半身太りに効く漢方(桂枝茯苓丸/桃核承気湯)
・食事・運動・睡眠のワンポイントアドバイス
肥満症・メタボリックシンドローム
食生活の欧米化に伴って、私たち日本人の肥体質は現在深刻な問題となっています。
「肥満」とは、からだに必要以上の脂肪が溜まっている状態で、内臓脂肪の蓄積に加え血圧値、血糖値など複数の検査数値に異常がある場合をメタボリックシンドロームといいます。
放置すると生活習慣病の原因になるばかりか動脈硬化が進行して心臓発作や脳梗塞などを起こす要因になる可能性もあります。
メタボリックシンドロームへの対処としては、まず食事療法、運動療法、良質な睡眠とストレスの軽減を目的とした生活指導が基本になりますが、体質に応じて漢方薬を併用しながら、体質改善を図り予防していきましょう。
A 食積タイプ お腹ぽっこり、脂肪太り
肥満症の中では最も多いタイプで、新陳代謝の悪さから脂肪が蓄積され、へそを中心に膨満したお腹が特徴です。
主に過食と運動不足が原因で、便秘や肩こり、のぼせもよくみられます。内臓脂肪を減らす効果の漢方薬を用います。
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
【主な症状】体力は充実している、のぼせ、頭痛、肩こり、耳なり、蕁麻疹ができやすい、便秘傾向、腹部に脂肪が多い太鼓腹、動悸、むくみ、食欲が旺盛、冬でも冷たいものを好む
【効果】余分な脂肪を分解し、燃焼しながら、からだに不要な老廃物の排出を助け、便秘、むくみを解消することで症状を改善します。
【成分の効能】麻黄(マオウ)、防風(ボウフウ)で脂肪燃焼しながら代謝を高め、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)で老廃物を出し、白朮(ビャクジュツ)、滑石(カッセキ)で水分を排出、石膏(セッコウ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、桔梗(キキョウ)で体内の熱をさまし、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)で血の巡りを整えます。
大承気湯(ダイジョウキトウ)
【主な症状】体力は充実している、みずおちのつかえ感と圧痛、便秘、汗をかきやすい、口渇、高血圧傾向、不安・不眠・興奮などの神経症状を伴うことも
【効果】胃の働きを整えながら滞った気を突き動かし、便通を整えることで症状を改善します。
【成分の効能】厚朴(コウボク)、枳実(キジツ)が滞った気を下に下げて、大黄、芒硝で便通を整えます。
B 水毒タイプ 色白でぽっちゃり、水太り
脂肪と水分の代謝が悪く中年の水太りに代表されるタイプで、体内に余分な水が溜まり、むくみやすい、手足が冷える傾向にあります。水分代謝をよくする漢方薬を服用すると同時に、筋力をつけて基礎代謝を向上させることも効果的です。
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)
【主な症状】色白でポチャッとした肥満傾向、水太りや下半身のむくみ、疲れやすい、汗をかきやすい、皮膚は湿りがちで冷たい、胃腸が弱く軟便・下痢傾向、尿量が少ない、膝関節痛を伴うことも
【効果】胃腸の機能を助け、水分代謝を高め、体内の水分の巡りを改善することでむくみを解消し、脂肪を燃焼します。
【成分の効能】防已(ボウイ)、黄耆(オウギ)は余分な水分を排出しながら気を補うことで発汗や代謝を整え、白朮、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)で胃腸の働きを高め水分代謝をサポートします。
五苓散(ゴレイサン)
【主な症状】むくによる体重の日内変動が大きい、口渇、尿量が少ない、雨の日に頭痛・倦怠感を感じる
【効果】直接脂肪燃焼する効果はありませんが、体内の水の偏在を速やかに改善することでむくみをすっきりさせます。
【成分の効能】猪苓(チョレイ)は尿量を増やし体内の余分な水分を強力に排出、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、白朮で利尿を促し、桂枝(ケイシ)は気血の巡りを改善することで利尿の効果を高めます。
C 気滞タイプ イライラを伴うがっちり、固太り

過度なストレスにさらされると怒りっぽく、のぼせ、イライラ、不眠傾向となり、便秘症状がみられる。胃が刺激され食欲が異常に亢進することもあります。
自律神経の緊張をゆるめながら、胃腸を整えて本来の食欲に導きます。
大柴胡湯(ダイサイコトウ)
【主な症状】体力がある、ストレス感じやすい、筋肉質でかた太り、食べることでストレス発散、口が苦い、胸や脇が張る、便秘傾向、不眠、ストレスを伴う肥満から高血圧や高脂血症、動脈硬化など生活習慣病を伴う傾向
【効果】自律神経の乱れを調えることで身体にこもった熱をさまし、気を巡らせ、便通を促すことで症状を改善します。
【成分の効能】柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)で身体の余分な熱と気の滞りを改善し、枳実で気の巡りを改善、大黄で老廃物を出し、半夏(ハンゲ)、大棗、生姜で胃の不調を整えます。
柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
【主な症状】ストレスによりイライラだけでなく不安、動悸を感じる。不眠傾向、ストレスが原因で食べ過ぎてしまうことも
【効果】気の滞りを改善し体内の余分な熱をさましながら、心を落ち着かせ、胃腸の働きも整えて身体全体のバランスを整えて症状を改善します。
【成分の効能】柴胡と黄芩で身体の余分な熱と気の滞りを改善し、竜骨(リュウコツ)、牡蛎(ボレイ)、茯苓で興奮を鎮めることで心を落ち着かせ、半夏、桂枝、生姜で気の巡りを整え、人参(ニンジン)と大棗で元気を補い胃腸を温めながらサポートします。
D 瘀血タイプ 血行不良、ホルモンバランス崩れの下半身太り
更年期などによるホルモンバランスの乱れや血の巡りの悪さが原因となり下半身太りやむくみが起こります。血行を改善して代謝を促す漢方で症状を改善します。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
【主な症状】体格はしっかりしている、足が冷えるのにのぼせやすい、肩こり、頭痛、ホルモンバランスの乱れによる食欲増進、血行不良によるむくみ
【効果】血の巡りを改善しながら余分な水分を排出することで症状を改善します。
【成分の効能】桂枝で身体を温めて血行を良くし上にのぼった気を下に引き下げ、桃仁(トウニン)は滞った古血を動かし、茯苓で水の巡りを整え、芍薬(シャクヤク)で筋肉の緊張を和らげます。
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
【主な症状】比較的体力がある、肌のくすみ、血行が悪い、冷えのぼせ、不安や興奮、便秘傾向、肩こり、めまい、頭痛、耳鳴り、イライラなどの不定愁訴を伴うことも
【効果】血の巡りを改善し、便通を促し、身体にこもった熱をさますことで気持ちを落ち着かせ、ホルモンバランスを整えます。
【成分の効能】桃仁、桂枝は血を巡らせ、大黄、芒硝は便通を整えながら熱をさます効果がバランスよく働くことで症状を改善します。
ワンポイントアドバイス
【食事の改善】
・脂っこいものや甘いものを控える
・よく噛んで腹八分目にする
・水分代謝を乱す冷たい飲み物を避ける
【積極的に摂取したい食材】
・気の巡りを良くしてストレスによる過食防ぐ
パセリ、セロリ、紫蘇、
・水を巡らせて水太りを解消
ハト麦茶、スイカ、小豆、キュウリ
・体内に溜った食積を解消
山芋、ニンジン、しいたけ、大根
【運動と活動量】
・有酸素運動で脂肪燃焼を促す
・日常生活でこまめに体を動かす
【睡眠とストレスケア】
・自律神経を整えるため夜ふかしはなるべく避ける
・ストレスによる食べ過ぎを防ぐ
・リラックスする時間を作る
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