この記事でわかること
・中古マンションの成約単価がバブル期の水準を割り込んだ
・売り出し価格と成約価格の差が1810万円に開いた
・東京都区部の単価が76か月ぶりに下落した
・戸建ては価格8か月連続上昇、在庫は7か月連続減
・35年前の水準を割ったことが何を意味するか
中古マンション:成約単価が1990年10月の水準を割り込んだ
東日本レインズ(公益財団法人東日本不動産流通機構)が9月10日に公表した「月例速報2026年8月」によると、首都圏中古マンションの成約㎡単価は81.60万円/㎡で前年同月比マイナス3.8%と4か月連続の下落。前月比も3.1%下げ、1990年10月の83.50万円/㎡を下回っている。
7月は、成約㎡単価84.17万円/㎡がこの1990年10月の水準をかろうじて上回っていたが、8月はそこから2.57万円/㎡下げ、基準を割り込んだ。
成約件数は3180件で前年同月比マイナス10.5%と5か月連続の減少。減少率は7月のマイナス8.6%からさらに広がり、2ケタに乗せた。新規登録件数は1万5627件(同プラス9.7%)と3か月連続で増加し、在庫件数も4万8235件(同プラス8.2%)とこちらは6か月連続で増え続けている。この結果、在庫の増加率も5.5%から8.2%へ拡大した。
売り出し価格と成約価格の差は1810万円
成約価格は5129万円で前年同月比マイナス2.8%と4か月連続の下落。前月比も2.6%下げている。
一方で、売り出し側の数字は上がり続けている。
新規登録㎡単価は116.81万円/㎡(同プラス21.5%)と2024年5月から28か月連続で上昇、在庫㎡単価は119.36万円/㎡(同プラス28.4%)と2024年8月から25か月連続で上昇した。在庫価格は6939万円(同プラス29.0%)に達し、成約価格5129万円との差は1810万円ある。7月時点の1599万円から、1か月で211万円広がった。
成約・新規登録・在庫の3つを並べると、向きの違いがはっきりする。
| 区分 | 件数 | 前年同月比 | ㎡単価 | 前年同月比 | 価格 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 成約 | 3,180件 | -10.5% | 81.60万円/㎡ | -3.8% | 5,129万円 | -2.8% |
| 新規登録 | 15,627件 | +9.7% | 116.81万円/㎡ | +21.5% | 6,751万円 | +21.5% |
| 在庫 | 48,235件 | +8.2% | 119.36万円/㎡ | +28.4% | 6,939万円 | +29.0% |
※東日本レインズ「月例速報2026年8月」より作成
在庫4万8235件を成約3180件で割ると15.2か月分になる。いま市場に出ている物件を売り切るのに1年3か月かかる計算だ。
エリア別:都区部の単価が76か月ぶりに下落
エリア別の成約㎡単価で目を引くのは東京都区部だ。132.69万円/㎡で前年同月比マイナス0.3%と、2020年4月以来76か月ぶりに下落した。ほぼ横ばいの下げ幅とはいえ、6年以上続いた連続上昇がここで止まった。
7月は「単価そのものは都区部で75か月連続の上昇を保っており、価格が崩れたわけではない」としたが、その連続記録が途切れたことになる。
成約件数でも都区部は1265件(同マイナス20.6%)と8か月連続で減少し、下げ幅は2割に達する。多摩は297件(同マイナス9.5%)と5か月ぶりの減少、神奈川県他は227件(同マイナス9.2%)と2024年10月以来22か月ぶりの減少に転じている。横浜・川崎市も581件(同マイナス2.2%)と2か月連続で減った。
増えたのは埼玉県の412件(同プラス5.4%)と千葉県の398件(同プラス0.3%)だけで、どちらも2か月ぶりの増加である。
単価のほうは都区部と横浜・川崎市を除けば上昇が続く。多摩は59.90万円/㎡(同プラス9.1%)と2025年8月から13か月連続、神奈川県他は45.07万円/㎡(同プラス9.0%)と8か月連続、埼玉県は44.35万円/㎡(同プラス2.0%)と8か月連続で上昇した。千葉県は41.68万円/㎡(同プラス5.1%)と2か月ぶりに上昇している。
| エリア | 成約件数 | 前年同月比 | 連続状況 | ㎡単価 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都区部 | 1,265件 | -20.6% | 8か月連続減 | 132.69万円/㎡ | -0.3% |
| 東京都多摩 | 297件 | -9.5% | 5か月ぶり減 | 59.90万円/㎡ | +9.1% |
| 横浜・川崎市 | 581件 | -2.2% | 2か月連続減 | 65.95万円/㎡ | -0.5% |
| 神奈川県他 | 227件 | -9.2% | 22か月ぶり減 | 45.07万円/㎡ | +9.0% |
| 埼玉県 | 412件 | +5.4% | 2か月ぶり増 | 44.35万円/㎡ | +2.0% |
| 千葉県 | 398件 | +0.3% | 2か月ぶり増 | 41.68万円/㎡ | +5.1% |
※東日本レインズ「月例速報2026年8月」より作成
都心が減って郊外が増えるという、これまでの構図に戻ったようにも見える。ただ都区部の単価が下がり始めた点は、7月までとは違う大きな変化といえるだろう。
中古戸建住宅:成約価格は8か月連続で上昇、在庫は7か月連続減
首都圏中古戸建住宅の成約件数は1641件で前年同月比プラス1.9%と2か月ぶりに増加した。新規登録件数は6079件(同プラス2.5%)と2か月連続で増加、在庫件数は2万3277件(同マイナス1.2%)と7か月連続で減少している。在庫が積み上がるマンションとは需給が逆になっている点は、7月から変わらない。
成約価格は3960万円で前年同月比プラス1.7%と8か月連続の上昇。前月比もプラス0.7%と、7月の3933万円から戻した。新規登録価格は4908万円(同プラス9.9%)と2025年8月から13か月連続、在庫価格は4799万円(同プラス8.3%)と2025年3月から18か月連続で上昇している。
土地面積は151.08㎡(同プラス3.2%)と2か月ぶりに拡大し、建物面積は102.88㎡(同マイナス0.6%)と4か月連続で縮小した。
| 区分 | 件数 | 前年同月比 | 価格 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 成約 | 1,641件 | +1.9% | 3,960万円 | +1.7% |
| 新規登録 | 6,079件 | +2.5% | 4,908万円 | +9.9% |
| 在庫 | 23,277件 | -1.2% | 4,799万円 | +8.3% |
※東日本レインズ「月例速報2026年8月」より作成
エリア別の成約件数は、東京都区部が271件(同マイナス0.7%)とほぼ横ばいながら6か月連続で減少、神奈川県他が198件(同マイナス2.9%)と2か月連続で減った。増えたのは多摩の220件(同プラス10.6%)が2か月連続、横浜・川崎市の234件(同プラス0.9%)が2024年11月から22か月連続、埼玉県の387件(同プラス2.1%)が5か月連続、千葉県の331件(同プラス2.2%)が2か月ぶりである。
成約価格は東京都区部が7815万円(同プラス4.4%)と5か月連続、多摩が3775万円(同プラス5.0%)と2か月連続、神奈川県他が3385万円(同プラス6.9%)と8か月連続、千葉県が2613万円(同プラス2.2%)と8か月連続で上昇した。下げたのは横浜・川崎市の4347万円(同マイナス2.8%)が2か月連続、埼玉県の2578万円(同マイナス2.4%)が5か月ぶりの下落となっている。
| エリア | 成約件数 | 前年同月比 | 連続状況 | 価格 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都区部 | 271件 | -0.7% | 6か月連続減 | 7,815万円 | +4.4% |
| 東京都多摩 | 220件 | +10.6% | 2か月連続増 | 3,775万円 | +5.0% |
| 横浜・川崎市 | 234件 | +0.9% | 22か月連続増 | 4,347万円 | -2.8% |
| 神奈川県他 | 198件 | -2.9% | 2か月連続減 | 3,385万円 | +6.9% |
| 埼玉県 | 387件 | +2.1% | 5か月連続増 | 2,578万円 | -2.4% |
| 千葉県 | 331件 | +2.2% | 2か月ぶり増 | 2,613万円 | +2.2% |
※東日本レインズ「月例速報2026年8月」より作成
35年前の水準を割った意味
8月の数字で最も重いのは、成約㎡単価81.60万円/㎡がバブル期の1990年10月を下回ったことだろう。
この水準は、2024年から2026年にかけての値上がりを語るときに繰り返し引き合いに出されてきた。「バブル期を超えた」という表現の根拠がこの83.50万円/㎡である。8月はそれを1.90万円/㎡下回った。7月に上回り、8月に下回る。境目の上を行き来している段階ではあるが、上抜けてから下抜けたという順番には意味がある。
もっとも、下がったのは成約単価だけだ。在庫㎡単価は119.36万円/㎡で25か月連続の上昇を続けている。売り出し価格は上がり続け、成約価格だけが下がっている。その差は37.76万円/㎡、価格でいえば1810万円に開いた。
在庫は6か月連続で増え、いまや15.2か月分ある。売り手が値段を下げずに待つことを選んだ結果が、この在庫の山だといえよう。都区部の単価が76か月ぶりに下落したのは、その待ちが限界に近づいたサインなのかもしれない。
一方の戸建ては、成約価格が8か月連続で上昇し、在庫も7か月連続で減っている。同じ首都圏の中古住宅でありながら、マンションとは逆の動きが続く。マンションの売り出し価格が手の届かない水準まで上がったぶん、買い手が戸建てへ回っていると見ることもできる。
売却を考えているなら、周辺の売り出し価格ではなく成約価格を見ておきたいところだ。8月の数字では、その差は1810万円ある。在庫が6か月続けて増えているということは、この差を埋められなかった物件がそれだけ積み上がっているということでもある。
買う側から見れば、局面は変わりつつある。成約単価が4か月続けて前年を下回り、都区部の連続上昇も止まった。値引き交渉の余地が出てきたといえるだろう。






